SNS投稿から個人情報を特定されないため3つの注意~特定屋のモザイクアプローチを避けるには

ネットストーカーがモザイクアプローチで個人情報を集めるイメージ
ネットストーカーの被害が増えていますが、背後にはネット上の情報を集めてパズルのように組み合わせるモザイクアプローチによって個人情報を割り出す「特定屋(特定班/特定厨)」の存在があります。
SNSに一枚の写真を投稿するだけでどれだけの危険があるのか?巧妙な手口の実態から、被害にあわないための対策について詳しくご説明します。
特にお子様の写真投稿には十分にご注意ください。

特定屋は「モザイクアプローチ」であなたの個人情報に近づく

多発するネットストーカー被害の影に特定屋(特定厨)の暗躍がある!

2020年10月から11月のNHKの記事「個人情報割り出す特定屋、ストーカー行為に悪用も」など、SNSで個人情報を特定される危険に関連した記事が注目を集めました。

報酬を受け取ってSNSの画像などをもとに、第三者の個人情報を割り出す動きが広がっていることが分かりました。
こうした人は「特定屋」と呼ばれていますが、ストーカー行為に悪用されるケースも確認されていて、専門家は犯罪につながるおそれもあると指摘しています。

「住所割り出します」「特定してくれた人には報酬あげます」これはSNS上でやり取りされている内容です。

他人から依頼を受けて第三者の個人情報を割り出す動きが広がっていて、こうした行為をする人は「特定屋」と呼ばれています。
「特定屋」は投稿された画像やメッセージをもとに、主にSNSを使ってその人の住所などの個人情報を割り出し、多くの場合は数千円から数万円の報酬を得ています。

NHKが取材した複数の「特定屋」によると、ネットでの商品売買のトラブルなどで相手を特定してほしいという依頼が多い一方で、中には「元交際相手の住所を突き止めてほしい」という依頼もあるということです。

■出展:NHK NEWS WEB 「個人情報割り出す「特定屋」ストーカー行為に悪用も」

 

当時、知っていたのは女性の氏名と年齢、それに大学生ということだけ。
居場所を知りたいと思いインターネットで検索したものの、それ以上の情報は出てきませんでした。

そこで男は、ツイッターを通じて「特定屋」に5000円で調査を依頼しました。
すると3日後、「女性のツイッターアカウントを見つけた」と早速連絡があったといいます。さらに住所まで割り出してもらったという男は、それらの情報をもとに通っている大学を特定。
女性を誹謗中傷する電話をかけたほか、女性あての郵便物を勝手にほかの住所に転送するなど、嫌がらせを繰り返したということです。

■出展:NHK NEWS WEB 「あなたの住所、特定されています」

特定屋とは

特定屋とは「SNSの投稿や画像を元に、あたかもパズルを組み合わせるように、複数の投稿を組み立てて個人情報を得るモザイクアプローチという手法で個人情報を特定することで報酬を得る人達のことです。

ネット上では「特定班」や「特定厨」と呼ばれることもあります。

特定屋の特徴としては

  • 依頼相手は学生や主婦、高齢者などさまざま。
  • 表向きの依頼理由は、「ネット上の詐欺被害や誹謗中傷を受けたので加害者を特定したい、警察に相談したい」といったケース。ただし事実かはわからない。
  • 報酬は1件当たり1500円から1万円程度。
  • 成功率は9割
  • 氏名や住所、電話番号などを早ければ1時間で割り出せる

と言われています。

特定屋と、探偵や興信所は何が違うのか?

かつてはこのような調査は探偵興信所に依頼するしかありませんでした。

探偵や興信所は、警察や公安委員会に届け出が必要で、探偵業法にしたがって探偵業務を行っています。
そこで依頼者は探偵を雇うためには、自分の身元を明らかにし、目的を説明して違法性がないことを証明する必要があり、多額の費用もかかります。

しかし、探偵に比べて特定屋は面倒な手続や高額な費用なしに、手軽に同様の事が依頼できるわけで、必然的に怪しいまともでない目的に使われることになってしまいます。

限りなく黒に使い、グレーな存在と言ってよいと思います。

特定屋は「モザイクアプローチ」で個人情報を突き止めていく

ネット上での断片的な個人情報や、写真、位置情報などの無数の情報を集め、一つ一つは意味をなさなくとも、パズルのようにたくさんの情報を組み合わせて推測を深めていくと、真実に近づくことができます。

このような手法を「モザイクアプローチ」と言い、特定屋が使う手法です。

特定屋の人たちは元々、ネット上で色々な情報を集め、推理しながらプライバシー情報を割り出すことを趣味として楽しんでいるうちに、「ネットの炎上」に手を貸したり、「報酬を得てビジネスに手を広げる」ケースもあるようです。

 

特定屋が利用するモザイクアプローチの手法の実例

実例1.アイドルを襲ったネットストーカー事件

2019年秋に「26歳のアイドルが自宅でネットストーカーに襲われて、27歳の犯人が住居侵入と強制わいせつ致傷の実刑判決を受けた」事件が報道さました。

この犯人が使った手口こそモザイクアプローチそのものでした。

アイドル活動をする20代の女性にわいせつな行為をしたとして警視庁が逮捕した男が、被害者の住所を特定するため、会員制交流サイト(SNS)に投稿された女性の顔写真から「瞳に映った景色を手掛かりにした」と供述していることが8日、捜査関係者への取材で分かった。

判決によると、被告は多額の金を費やして応援していた女性から冷たい対応をされるようになり、自暴自棄になって犯行を計画。昨年9月1日午後10時50分ごろ、東京都江戸川区のマンションに帰宅した20代女性の口元を後ろからふさぎ、玄関内に押し倒して尻付近を触り、転倒で顔にあざを負わせるなどした。

公判資料から分かったネットストーカー犯行の内容

この事件の裁判資料から以下のようなモザイクアプローチの事例が分かっています。

  1. 犯人は、まず「アイドルのSNS投稿写真の瞳に写りこんでいた風景」を拡大し、最寄り駅を割り出した。
  2. 投稿写真の背景に写ったカーテンの柄を探してマンションを特定し、部屋位置も確認した。
  3. 「アイドルが自室からライブ配信をしている最中」に各部屋のインターホンを鳴らして回り、ライブ配信にチャイム音が鳴ったことで、正確な部屋を特定して犯行に及んだ。

 

実例2.写真一枚からほぼ自宅の位置が特定されてしまう

以下は2020年9月15日の日本テレビのバラエティ「スッキリ」の特集「近年増加しているSNSトラブル」でモザイクアプローチの実験として紹介された事例です。

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ネットストーカーのイメージ

[実験の内容]

「犬と共に微笑む女性が写った自撮り写真。背景にはどこにでもあるような、交差点での路上で、マンホールと歩道のガードレールが写っている」

写真からどれだけの情報が割り出せるか?」

結果は、この写真だけで、ほぼ自宅の位置が突き止められてしまいます。

「ガードレールの写真」から「どこの区で撮ったか」が分かる!

  • 背景に写っていた歩道のガードレールの色が、23区は区ごとに異なるため区が特定できる。

「マンホールの写真」から正確な場所が特定できる!

  • 背景に写っていたマンホールの蓋の柄からどこの場所が特定できる。
  • マンホールの識別番号を拡大すると、200mまで特定できる。
マンホールのフタの記号でこれだけの場所が特定できる例

写真一枚からこれだけの情報が知られてしまう

個々の情報には大した意味はなくても、いろいろな情報をつなぎ合わせて分析すると全体が見えてきます。
これこそモザイクアプローチの怖いところです

昔は情報の分析は大変でしたが、今ではネットのおかげで簡単にできてしまいます。

たとえばガードレールや駅の建物も、Googleの画像検索をかければ容易に類似画像が見つけ出せます。

上のケースでは「散歩の投稿」とされていたため、「散歩=自宅の近く」と推察でき、他の情報と照らし合わせることで容易に自宅位置が推測できます。

あとは他の投稿の写真から得られる断片的な情報、たとえば「電柱の広告」「近くのマンション」「自宅のカーテンの柄や玄関ドアのデザイン」などを組み合わせて自宅を特定することは容易となるでしょう。

SNSも不特定多数に拡散されるTwitterはともかく、FacebookやLINEのようにクローズドな友達だけへの投稿だとしても、「友達の友達」を通して、またこの頃多発しているアカウントの乗っ取りなどを経由して拡散してしまうことは大いにあり得ます。

 

モザイクアプローチを避けるためには

不特定多数に向けての投稿は特に注意

SNSはTwitterやInstagramのように不特定多数に容易に拡散するものと、FacebookやLINEのように一定の範囲にだけ投稿するものに分かれます。

不特定多数に拡散されてしまうSNSは、一時被害が拡大した「バイトテロ」事件のように、拡散して思わぬ事態を招き、バッシングや炎上に繋がることもありますので、原則として個人を特定できる情報は流すべきではありません。
常にその事を頭に置いて投稿しないとたいへん危険です。

またFacebookやLINEのような特定の友達だけを対象にしたSNSも、いったん送信した投稿は容易に外に転送できるため、拡散のリスクは常につきまといます。

たとえば、自分は気をつけて匿名にしていても、投稿に「いいね」がついた友達のアカウントを調べて、友達の投稿から、名前や職業などの個人情報にたどり着かれることもあります。

動画の投稿には一段と慎重な注意が必要

近年、投稿の主流は写真から動画に写りつつあります。
しかも動画は写真に比べて、映り込む範囲が広く、チェックも大変で、その結果思わぬ映像が拡散するリスクが高まります。

写真以上に十分にご注意ください。

赤ちゃんやお子様の写真は特に注意

「かわいいお子様が入学式の校門前でピースサインをしている写真」をネットでしばしば見かけます

また「生後間もない、愛らしい赤ちゃんの写真がSNS上に投稿される」ことも普通です。

しかし「誕生日」「顔写真」「指紋」「学校名」など、本人を特定できる個人情報も一緒に不用意に掲載されていることに危惧を覚えてしまいます

しかし、ぜひ考えていただきたいことは、「お子様にもプライバシーの権利がある」ということです。

それを守るのはご両親の義務です。

一時の親の心の満足だけで、安易に公表することは慎むべきと思います。

  • いったんインターネットに流れ出た写真は取り返すことができません。
  • 将来、その写真がどう使われて、成長したお子さんにどのような影響を与えるか予測できません。

未来のお子様の安全に直結する、モザイクアプローチに情報を与えることにならないか?考えて投稿しましょう。

 

モザイクアプローチを避ける5つの3原則

原則1.投稿文に身元を特定するような情報は書かない。

  • 「近くの○○」「○○の近所」とか「歩いて○分」といった居住地域が特定されるような投稿しない。
  • 常連のレストラン、通っている学校、塾やスポーツセンターなど行動を特定する話題も投稿しない。
  • 「最寄り駅での電車遅延」や「近所の道路工事」「今地震が来た」といった情報は後から日時場所が容易に検索できるため、投稿を避ける。

原則2.写真・動画から読み取られる情報に注意

  • 写真を投稿する時は、背景だけでなく、「鏡や窓に映り込んでいる光景」もチェックする。「自宅窓からの風景」も注意
  • 制服姿や校門前など、学校名が知られる写真は投稿しない。
  • 写真の内容や埋め込まれている情報をチェックし、不要なときは削除する。
    ・・撮影した写真には「いつどこで撮影されたか」の詳細情報(Exifデータ)が撮影時に埋め込まれているので、写真をアップしたり送る前には、「場所を特定する日時や位置のデータを削除」する必要があります。
    LINE、Twitter、Facebook、Instagramといった大手のSNSでは、投稿時に自動的に削除されるので安心ですが、リンクや添付などで写真を送るときは、必ずExif情報を削除してから送るようにしてください。
  • アップの写真の場合は「自分の瞳に映り込んでいる光景」「ピース写真の指の指紋」にも注意する。
  • たとえ小さくても「カレンダーのメモ、郵便物、レシート、宅配便の伝票、最寄りのスーパーの袋」などの個人情報に繋がる写り込みに注意。
  • 特に動画を撮影するときは注意が必要

原則3.撮影場所の選び方は慎重に。自宅での撮影は特に注意する。

  • うっかり流出のミスを避けるため日常生活の生活圏内で撮影した写真の投稿は止める。
    ・・「住所表示」「電柱の番号」「自動販売機の記載」など身の回りには住所を特定できる情報があふれています!
  • 詳しいチェックが難しい動画撮影は特に注意が必要。
  • 職場や学校、最寄り駅も十分な注意が必要。できれば避ける。
  • 自宅からのリアルタイムの動画投稿は、外からの音(呼び声、チャイム)などで部屋を特定される恐れがあるため避ける。

 

詳しくは当ブログの下記記事もご覧下さい

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まとめ:
ネットの便利さの影に隠れた危険を学び基本を身につけよう

普通の人がデジタルを使うようになってまだ20年、スマホはほんの10年ほどです。
便利さばかりが先行し、まだ基本的な使い方やマナー、ルールを確実に理解されていません。犯人はそのすきにつけ込んで犯行を成功させます。大げさに感じても注意しすぎることはありません。

SNSの投稿は

  • 「投稿したら最後、世界中に広がる可能性がある」
  • 「検索技術により、膨大な情報の中から容易に特定される可能性がある」

ことを強く自覚し、自分の身とプライバシーを守りましょう!

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