今のPCなら数字8文字のパスワードは瞬間に解析され破られてしまう
コンピューターの能力は日に日にどんどん進んでいる。
よく読むと続けてWikipediaにも
「上記の表のスーパーコンピュータは10億回/秒の解析能力とされているが、2016年の市販GPUを一つ使用して解析すれば、その10倍以上の速度を出すことができる。また、仮想通貨の採掘業者などは数千万倍の計算能力を持っている」
■引用:Wikipedia「総当たり攻撃」より
と「ただし書き」が追記されています。
この記事自体書かれたのが2016年ですから、今ではこの結果よりはるかに早くなっていて、2009年当時と比べると数千~数万倍は早くなっているはずです。
パスワードの解析(解読)時間計測サイトでパスワード強度を測ってみると?
「8文字パスワードは危なそうだ」とお分かりいただけたところで、「それでは今のコンピューター性能ではどのくらいで解析されるのか?」
なんとパスワードを入力するとパスワード強度を計測してくれるサイトがあります。
それでは早速、この解析サイトに「数字だけ」「数字と大小の半角英文字、記号を含めた」の8文字、10文字、12文字のパスワードを作って強度を計測してみました。下の表がその結果です。
数字だけ | 英数字+大文字+小文字+記号 | |||||
入力文字数 | 8文字(8桁) | 10文字 | 12文字 | 8文字 | 10文字 | 12文字 |
入れたパスワード | 16236839 | 13404945-212 | 13205467824428 | @Wep%)1w | Ert44#@q56 | wEr%415wio&$ |
計測結果 | (一瞬)10分の3秒 | 3秒 | 42分 | 9時間 | 6年間 | 3万4000年 |
- 数字だけでは8文字~12文字では一瞬で解析される。12文字入れたら42分となる
- 数字以外の英文字も入れて複雑にしたら10文字なら6年間かかって解読!
「よし、まあこれで大丈夫じゃないの」と安心しましたか? しかし、、、、
コンピューターの能力に加えて、計算方法もどんどん高速になっている。
でもさらに続きがあります。
複数のコンピューターを同時に使って解析処理することで、計算速度を大きく高速化する「並行処理」という高速化の方法があります。
さらにネットワークが高速化したことで、離れて設置された多数のコンピューターをネットで繋いで処理を行う「分散処理」と言う技術もあります。
近年この技術がどんどん進み、安価になったPCを多数同時に使って容易に超高速処理ができるようになりました。
またGPU(グラフィックボード)という市販されてる画像処理を高速化する部品をPCに接続することで、計算や処理を飛躍的に高速化する手法もポピュラーです。
実はこれらは少しパソコンに詳しい人なら誰でも、もちろん犯罪集団でも簡単に活用できる技術です。これを使うと、上記の解析時間を数百~数千倍高めることはできてしまいます。
上記のWikipedia記事には次のような記載もあります。
一部ハッカーなどは「良く的中する効率が良い辞書」の育成の為に、「過去の流出したパスワードからの傾向性分析」などに血道をあげる者もおり、あるいはどちらの辞書が優秀か、ハッカー同士で競い合うケースもある。実際には、総当たり攻撃と辞書攻撃を組み合わせて、総当たりしつつも確率が高いワードから取り掛かり、時短を図るケースも多い。
■引用:Wikipedia「総当たり攻撃」より
さらにもっとすごい話ですが「量子コンピューター」という、今のコンピュータとは全く異なる理論で動く「超高速コンピューター」の研究が進んでいます。
試作品はすでに完成し、近年には実用化するめどが立ってきました。
量子コンピューターが実用化されると、「今のスーパーコンピューターで何年もかかるような複雑膨大な計算が一瞬で終わってしまう」、もはや次元の違う速さとなり、パスワードの解析など何文字あっても一瞬で解読でき、結果としてパスワードの長さは全く意味がなってしまいます。
もっともその頃までにはパスワードとは全く異なる認証技術が生まれているでしょう。
トランプ前大統領の Twitterの安易なパスワードが破られる!?
ここで話題を変えて、パスワードに関係したおもしろい話題をひとつ!
トランプ前大統領はTwitterのヘビーユーザーだったことは有名ですが、2020年10月にオランダのセキュリティ専門家のVictor Gevers氏が「トランプ氏のTwitterのパスワードを見つけてハッキングした」と発表しました。
Gevers氏は2016年にもトランプ氏のパスワードを見破っていますが、その時のパスワードは「yourefired=お前は首だ」でした。
ご存知のように、このフレーズはトランプ氏が出演してていたテレビ番組の決まり文句で「そんな言葉を大切なパスワードにつかうなんて」とあきれてしまいました。
ところが、今回破られたのは「maga2020!」です。
magaとはトランプ氏が毎日のように叫んでいる「Make America Great Again」のことで、またしても類推されやすい言葉を安易に使っていたわけで、「一国の大統領の安全保障はどうなってるんだ」と笑ってしまいました。
Victor Gevers氏は悪用目的でなく「大統領のセキュリティの問題を指摘するため」にハッキングを行ったので、犯罪には問われませんでした。
シークレットサービスから「知らせてくれてありがとう」と連絡があったそうです。